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メッセージ 2018-09-25T10:34:33+00:00

2018年9月 「2018年夏、野尻湖」 理事長 牧野兼三

2018年7月 「給付型奨学金への思い」 理事 鈴木幸夫

2018年5月 「学校に行くことはお金が掛かる」 理事 司祭マリア・グレイス笹森田鶴

2017年12月    「2017年のクリスマスキャロル」 理事長 牧野兼三

2017年6月 「カパティランの根」 理事 司祭ヨハネ神﨑雄二

2016年7月 「カパティランの働きはつながる」 理事 牧野兼三

 

■2019年9月 

「2018年夏、野尻湖」 理事長 牧野兼三

今年で5年目を迎えたカパティランの野尻湖キャンプ。海外にルーツを持つ若者たち5名が参加した。毎年利用させてもらっている国際村の神﨑雄二司祭のコテージで、共に食卓を囲み、祈り、語り、笑い、泳ぎ、漕ぎ、読み、温泉に入り過ごした。キャンプのルールは、食事の準備と片付け以外は特にプログラムを決めず、各自が好きなことをして過ごせるということ。雄大な自然の中、自由に時間を過ごし、皆が無邪気に笑う。徐々に心がほぐれていき、一人一人がぽつりぽつりと話し出す。

Jさんは、定時制高校3年生の女の子。両親は離婚し、父親とはしばらく会っていない。小学校5年の時に、日本で教育を受けるため、母親と二人で来日。英語が得意でTOEICのスコアは930点。普段は家計を支えるため、スーパーのバイトで忙しい。少し引っ込み思案でアピールするのがちょっと苦手。受験を控えており、先生や友だちはもっと上を目指せという。ただ今年はまだ小学生の弟も来日予定で、どうしても家計のことが気になってしまう。もっと上のレベルの大学にも行ける実力はあるが、本人は特待生として授業料免除で迎えてくれる女子大に魅力を感じている。「やはり授業料がかからないというのは大きいですよ。」とはにかむ。

H君は社会人2年目の19歳。4人兄弟の長男。初めてキャンプに参加した5年前は「家計を助けるため、高校を出て消防士になる」と希望に燃えていた。ところが「君は日本国籍ではないので公務員にはなれないよ。」たった一つの事実が夢を消し去ってしまう。まずは定職につき、納税し、日本国籍を取ることが当面の目標。千葉の田舎町の鍛造(たんぞう:鉄を打つ)工場で働いている。作業場内の気温は45度以上。これまで二度ほど気を失ない倒れた。体力勝負なのでメシはいくらでも食べられる。自分の腕に吹いた塩を舐めて熱中症を防ぐ。今年は小学生の弟も連れてくることができた。父親代わりに水泳を教える。自分には大切な弟や妹がいる、日本国籍を取り公務員になるという夢もある。だから頑張っていけると胸を張った。

Eさんはこの春大学を卒業し、東京郊外の児童養護施設に勤務する社会人一年生。担任は未就学児クラス。23歳にして大勢の母親のような役割。覚悟はしていたが決して楽な仕事ではない。中でも14時から翌日14時までの宿直勤務が眠れず長時間で辛い。子供たちに食べさせるため、自分は飲み込むように食事をする癖がついてしまった。離職率も高いが、今はがむしゃらにやるしかない。フィリピン人の母親とは最近初めて一緒にカラオケに行った。お母さんは歌に合わせてずっと踊っていておかしかった。就職を機に、離別している父親に連絡を取ってみたが、反応はイマイチだった。もう新しい生活が始まっているのかもしれない。最終日、長野で就職している彼氏が迎えに来てくれた。ずっと神﨑先生に会わせたかったので本当によかったと笑った。

カパティランの若者たち。皆それぞれ、様々な辛いこと、困難に向き合いながらも、希望を忘れずに生きている。来年はどんな話が聞けるのだろう。

「また来年!」都心のターミナル駅、皆それぞれ別の方向に別れた。

 

■2018年7月

「給付型奨学金への思い」 理事 鈴木幸夫

カパティランは、奨学金事業を開始した2015年10月から今年3月までに、大学生7名と高校生5名に対し総額318万円の奨学金を支給した。今年度は大学生5名(加えて下半期のみ1名)、高校生4名に180万円を支給する。お金のないカパティランにとって、これは大変な事業である。

奨学金を検討し始めたころ「貸与型でもよいのでは」という意見もあったが、給付型に踏み切った。経済格差が拡大し続ける日本で、奨学金という名の借金が学生の将来を暗くする状況が深刻さを増しているからだ。

その少し前、「司法試験に合格しても借りた奨学金が返せず自己破産に追い込まれ、法律家になれない」という嘘のような話を若い弁護士から聞いた。司法修習生(司法試験に合格し、弁護士や裁判官、検事になるために必要な実務研修制度)への生活給費が2011年に廃止されたからだ。1年間「無給」生活を強いられ、さらに借金がかさみそんな状況に陥る人が多発しかねないという。

事実、日本学生支援機構(旧日本育英会)によると奨学金が返せずに自己破産する人は年間3千人以上で、その数は増加傾向にある。

学生生活にはお金がかかる。高度な教育を受けるにはもっとお金がかかる。頑張って卒業し、公務員や正社員になれたとしても、数百万円~千万円近い奨学金返済を抱え、自分のやりたいこともできず、最悪、自己破産にまで追い込まれる。弁護士や裁判官や検事になるあと一歩の学生にもこんな状態の人がいるならば、他は推して知るべし。これが日本の現実なのだ。(この弁護士らの運動もあり「給費制」は去年4月に復活したが、以前の水準には及ばない。)

これらを「極端な例」と思わないでほしい。カパティラン奨学生は貸与型奨学金や教育ローンを背負いながら、アルバイトと学業を両立させるため必死で頑張っている。われわれの奨学金は、その重荷をほんの少し軽くできるかどうかのささやかなものだ。

勿論その奨学金原資は、支援者の皆様が額に汗し、お小遣いや生活費を節約し、神様に献げるのと同じ気持ちで下さった、尊く豊かな愛情に満ちたお金だ。こうした皆様の思いを一人一人の奨学生にしっかりと伝え、感謝と誇りをもって学業に打ち込んでもらう。これが、カパティランの大きな課題である。

 

■2018年5月

「学校に行くことはお金が掛かる」 理事 司祭マリア・グレイス笹森田鶴

日本での高校進学率は現在98%となっています。また、高校卒業後の進路についても約70%が学業を選択し、就職率は16%弱です。つまり日本に住んでいる子どもたちの半数以上が、成人式を迎えるまでは学校に行っているということになります。そして、学校に行くということは、入学金、授業料の他に、制服、教科書や文具、遠足などの学校行事、修学旅行や卒業に関わる積立金、部活をすればその費用が必要です。友だちと少し遊んだりするにしてもこの社会ではお金が必要です。学校に行くということにはお金がとにかく掛かるのです。

親が低収入であったために、わたしは高校の時から奨学金の申請とアルバイトの経験をし続けていました。大学と大学院は親元を離れたために生活費も自力で獲得しなければなりませんでしたので、短期長期のいくつもの奨学金をいただき、授業と授業の合間も含めたアルバイトの掛け持ちをしていました。ただそれは、大学では祖母の家に下宿していたこと、無利子の奨学金をいただけたこと、バブル経済真っ只中であったので条件の良いアルバイトがあったこと、当時の学費が現在の物価に比べて安価だったこと、さらに傍目よりも体が丈夫だったこと、それらの要因よって何とか成り立ったことでした。卒業時の奨学金の総額は驚くべき金額になっていましたが、毎月少しずつ返済し、働き始めてから20年後にようやく全額返済できました。それでも奨学金があったことによってわたしは学業を続けることができ、今の仕事にもつながっていることをとても有難かったと思っています。

社会の仕組みが影響して学費が高額になったり、経済状況の厳しい家庭が増えてこどもたちの学びの機会が減少していたりするならば、こどもたちを支える仕組みを考え、実行していくことが必要であろうと考えます。カパティランでは高校生、大学生向けの奨学金支給制度があります。金額は小さいかも知れませんが、こども一人の将来を支える大きな支援であると考えています。ぜひご協力をお願いいたします。

■2017年12月 

「2017年のクリスマスキャロル」 理事長 牧野兼三

最近うかがった話。世界的な投資銀行にお勤めの男性Aさんは、勤続30年のうち28年間ご自身が同性愛者であることを職場でカムアウト(公言)することができなかったそうです。

この数年「LGBT(性的少数派)」に対する社会の関心と理解が急速に高まり、Aさんの職場でもLGBT理解のための啓発活動が始まります。Aさんはその活動をサポートする中で「実は私も当事者です。」と2年前にカムアウトしました。

それ以降、Aさんは職場での評価は大きく変わったそうです。それまではどちらかというと組織の片隅にいたAさんが「顔が晴れて、肩が上がった」のだそうです。具体的には積極性とリーダーシップが向上したということでした。

Aさんは自分自身を肯定することができ、そのことを気兼ねなく発言でき、本来の自分を安心してさらけ出せることで、それまでの人生を大きく変えたのでした。

カパティランが寄り添っている子どもたちの環境は、このAさんに似ています。外国人労働者100万人時代と言われる昨今、海外にルーツを持つ子供たちの数は年々増え続けています。故郷から遠く離れた異国の島国で、言葉も十分にわからず、友達もいなければ、勉強にもついていけない。たいていは母子家庭で、経済的基盤も弱く、不安定な家庭環境。自分自身が何者であるかに確信が持てず、当然自信もない、でも寄り添える人もなく、孤独な目をして心を閉ざしている。

そうした子供たちは、社会の隅にいて、そこにいるのにまるでいないかのように扱われています。そこに忍びよる非行や犯罪への誘惑。近年、少年犯罪に外国籍の子どもたちが目立つのは私の先入観のせいではないと思います。

そんな子どもたちに一番必要なのは、まず自分自身のアイデンティティを確立すること。自分のルーツを知り、それに誇りを持つこと。そして、自分は決して見捨てられた存在ではない、ここにいていいのだと安心できる居場所を作ること。

カパティランは子どもたちの居場所つくりのために、月に一度ごはん会を開催しています。皆でメニューを決め、買い物に行き、キッチンに立ち、食卓を囲みます。それだけです。でもそれはとても大切なこと。一方で、高校生、大学生を対象に奨学金給付を行っています。「人生に必要なものは、勇気と想像力、そしてほんの少しのお金」だからです。子どもたちはその少しのお金で勉強や部活を続けています。

ディケンズの代表作「クリスマスキャロル」。クリスマスを毛嫌いする冷酷で守銭奴のスクルージ爺さんが、3人の精霊に彼自身の「過去」「現在」「未来」に導かれます。「過去」では少年時代を目の当たりにし、かつては貧しくとも純粋で希望に溢れていた自分自身を思い起こします。そして「現在」では、彼が忌み嫌う市井の貧しくとも慎ましく生きる人々のクリスマスの団らんが、いかに喜びに溢れ、気高いものでえあるかを見せられます。そして「未来」においては、誰からも関心を持たれず、世の中から忘れ去られ、居場所を失い、一人孤独に死んでいく彼自身を見るのです。

そして、スクルージは大きく変貌します。良き父、良き友、良き商売相手、良き先達となり、ロンドンで知らない人はいないくらいの好人物となるのです。人はそんな彼を笑いましたが、彼の心はそれ以上に笑っていたのでした。

2017年のクリスマスキャロル。今年皆さんは何を思って歌うのでしょうか。

「この世に価値のない人などいない。人は誰でも、誰かの重荷を軽くしてあげることができるから。」ディケンズの言葉です。

もしかすると、スクルージ爺さんのようにあなたの人生に大きな変化が起きるかもしれません。そして心を閉ざした子供たちの未来にも。みなさん、良いクリスマスを。

■2017年6月 

「カパティランの根」 理事 司祭ヨハネ神﨑雄二

私の教会に初めてフィリピンの女性たちが来たのは、1980年代の中頃だったと思う。彼女たちは20歳前後の歳で、フィリピンバーのエンターテイナーとして働いていた。毎月1~2回ほど教会に来るようになったが、12月に入れば一日も休みがなく、クリスマスの頃は、ほとほと疲れ切っていた。しかし「どうしてもクリスマスのミサには出たい」と言うので、夜の仕事が終わった後に、特別に彼女たちのためにミサを行うことにした。

クリスマスの早朝4時に彼女たちの仕事が終わるというので、その時間に教会の若者に車を運転してもらい、店まで出迎えに行った。雪が降っていた。 店のお兄さんたちに挨拶をして、10人ほどを教会までつれて来ると、彼女たちは直ちに礼拝堂に入り、ひざまづき、十字を切って、祈りの体制に入った。何かピーンと張り詰めたような空気が漂った。

代祷のところでは、郷里の父母兄弟のためにも祈ったが、思わず一人が泣き始めると、それは皆に伝播するのだった。「主の平和」のところでは皆抱き合い、また涙を流した。ミサがどんなに大事なものであるか、改めて思い知らされた。

ミサが終わると、私が作った暖かいシチュウをみんなで食べた。その後彼女たちが一体どこで手に入れたのか、クリスマスの時期なのに花火を出してきて、教会のホールで花火を始め、走り回るのだった。私はバケツに水を入れて彼女たちの後を追っかけて回った。

彼女たちをアパートに見送った後、教会は、降る雪の音が聞こえるほど静かになった。そして今の今まで騒いでいたのは、「天使たちだった」と、ふと思うのだった。

カパティランの働きの根っこのところに、こうした体験の積み重ねがある。現代の日本社会の片隅で、懸命に生きている在日・対日外国人とその家族が、ホッと出来る場が、多くの方々や諸教会のお支えによって与えられていることを、心から感謝している。

 

■2016年7月

「カパティランの働きはつながる」 理事 牧野兼三

カパティランの活動が「海外にルーツを持つ子どもに対する、居場所作り、学習・教育・奨学支援事業」に舵をきってからやがて一年半。

私たちは月に一度の「ごはん会」を継続的に開催し続けることで、少しずつ子供たちとの絆を深めてきました。

「ごはん会」では、毎回集まった皆で買い出しに行き、作業を分担して、ごはんを作って一緒に食べます。事前に決めるのはメニューくらいで、特にテーマは設けず、一人ひとりが過ごしやすいこと、話しやすいことを大切にしています。そうするうちに、徐々に参加メンバーも増えてきて、今では奨学生の故郷の郷土料理や、バイトで覚えた握り寿司が振舞われたりすることもあったりします。

そして5月の連休明け、カパティランにとっての初の催し、デイキャンプで長瀞渓谷に出かけることになりました。

実はこの長瀞渓谷、奨学生であるペルーにルーツを持つJ君の強い勧めによって決定したのでした。彼曰く、「埼玉に家族で大切にしている素晴らしい渓谷がある」のだと。

早朝に東京で集合し、車に便乗してお昼頃には長瀞渓谷に。現地に着いてみると、そこには満面の笑みをたたえたペルーからの移民Pさんご一家が「お待ちしていました!」

Pさんご一家は10年前に来日し、ご夫婦に子供は大学生のJ君を筆頭に男の子4人の6人家族。
ご家族にお会いするのは初めてでしたが、慣れない異国で、日本語もままならない中、家族の絆を第一優先に逞しく生きる姿は実に素敵でした。

男の子4人に渓谷での遊び方を教えるお父さん。息子以上に元気満々で、川に飛び込めと息子たちをケシかけますが、結局は自分がいの一番に飛び込みます。このお父さんの明るさが、これまで移住という困難の中で家族を支えてきたのだと感じられました。

夕暮れまで豊かな自然の中で遊び、帰路に着く頃には、またひとつの大切なカパティラン(タガログ語で兄弟愛・姉妹愛)が生まれました。

現在カパティランが奨学金によって支援している学生のルーツは様々です。フィリピン、ベトナム、ウクライナ、そしてペルー。ごはん会には、アフリカ系の子供も参加しています。その皆が日本で暮らすマイノリティで、自身のアイデンティティの形成に何らかの課題を抱えています。

私たちはその課題の解決に微力ながら取り組んでいきます。

より実践的なものへと変化しつつあるカパティランの働きに対し、今後とも皆様のご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。