可児(かに)ミッションと改定入管法

名古屋学生青年センター 総主事  池住 圭

✦可児(かに)ミッション、一本の電話から…
岐阜県可児市に住む外国籍の人たちとの最初の関わりは、学校教育に不安を抱く日系フィリピン人のお母さんからの一本の電話。 9年程前のことです。これをきっかけに、教育だけでなく、短期契約で働き続けざるを得ない将来への不安や、職場や地域社会での差別や偏見、労働現場での不当な扱いに苦しんでいるといった、切実な訴えが寄せられるようになりました。
彼らの訴えに少しでも応えたいと、NGOの力を借りて教育や就労、法律、そして日常生活一般に関する相談会や協議会を開いたり、電話での相談を受けたりしていました。
このような取り組みを通して、フィリピン聖公会信徒の存在に気づき始めたのはこの頃です。2004年になるとフィリピン聖公会北中央教区と中部教区が協働関係を締結し、その折に来日したパチャオ主教の歓迎夕食会に、可児市とその周辺で働くフィリピン人信徒30人以上が集まりました。参加しなかった人はこの倍以上にもなると聞かされ、驚いたのを覚えています。
この中には現在「可児伝道所」で執事として働く山下グレンさんもいました。その後、山下グレンさんの執事としての派遣を北中央教区にお願いし、2009年3月には開所式を、同年11月には教区会で「可児伝道所」の設立が決議されました。現在は毎主日の礼拝の他、毎週水曜日の午後には幼稚園児と小学生、時には中学生に日本語や一般科目を教える教室を開いています。
✦入管難民法を心配する
地域に根ざして生活をする外国籍の人たちと協働して、これからいろいろな活動をしようとする私たちに大きな懸念があります。それは、2009年7月に改定され、2012年7月までに施行しようとする「出入国管理及び難民認定法」(以下、入管難民法)と「住民基本台帳法」(以下、住基台帳法)です。
入管難民法は、これまでの外国人登録証(以下、外登証)に代わってICチップつきの「在留カード」を法務省が交付し、常時携帯義務を課すものです。
住基台帳法は、全ての外国人を住民基本台帳制度の対象にして、台帳に記載された内容に修正、或いは取り消しがなされた場合には、法務省と市町村が相互に報告するというものです。これまでは、外登証の発行は市町村、入国や在留に関する審査は法務省と二元化されていました。しかし新制度のもとでは、外国人に関わる情報が法務省よって一元管理されることになります。更に、教育機関や企業、宗教法人等にも外国人の受け入れ状況や、個々に関する情報の提供を求めます。これは、日本国民による「外国人の監視社会」を生むもので、外国人住民にとって多大な不利益があるばかりでなく、日常を共にする私たちにも大きな負担を強いるものです。
非正規滞在者への対応にも大きな懸念があります。在留カード、住基台帳によって非正規滞在者をあぶり出そうとすれば、社会福祉からこぼれ落ちる「見えない外国人」を大量に生み出す可能性があります。子どもたちの教育も懸念されます。公教育を受けている子どもたちの教育権が奪われるばかりでなく、強制退去処分になる可能性も大きいのです。
この改定入管難民法は、女性配偶者の立場がますます弱められる可能性がある、プライバシー保護に問題があるなど、紙面の都合上ここに記せない多くの問題もはらんでいます。
✦多民族共生社会を目指して
異質を抱える社会こそが健全なのです。外国から働きに来ている人たちを、経済の調整弁としての労働力ではなく、経済発展と新しい国づくりのための貴重な人的資源と認識すべきなのです。ましてや監視の対象とするなどもっての他です。地道に信頼関係を構築しようとする私たちの妨げに他なりません。国籍信条を超えて全ての人の尊厳が守られるような、多民族共生社会の構築を目指す私たちは、改定入管法の施行をどう捉え、外国籍住民とどう協働していくのかが問われているように思います。

報告: 第2回育児タラカヤン

9月8日水曜日、母親たちのグループが、育児の問題についての第2回タラカヤン(グループディスカッション)に来ました。外は雨が激しく降っていましたが、母親たちはなんとかやって来ました。そして私たちは、彼女たちの再会の喜びを見ることができました。
参加者は昼食を持ち寄りました。そして一緒に昼食をとりながら、第1回育児タラカヤンで配られた資料を読んで書いて来たメモを見て、シェアリングを行いました。
議論はフィリピン語で行われました。前回の振り返りを短く行った後、母親たちは、自分の考え、あるいは、生後5歳までの育児期間の経験をシェアリングするように求められました。育児の間、いろいろな問題があったとはいえ、母親たちにとって概ね幸せな経験だったようです。ある母親はこう言いました。“問題なんか気にならない。自分の子におっぱいをあげるために夜起きるのも気にならない。わが子といっしょにいる、それが幸せだから。”進行役の人が、子どもたちのために何をしたいかという問いを投げかけました。母親たちは次のように答えていました“なんでも。だって子どもを愛しているから。”
シングルマザーであることで、ときどきあきらめたくなるときがある、特に孤独だと感じ、誰とも話せないときに、あきらめてしまいそうになると語りました。それでも、こどもの顔を見ると、その孤独の気持ちを忘れるようです。ここに、この会合を続ける必要がある、勉強し、他のシングルマザーとつながる必要があると母親たちが感じている理由があります。
小学校の子どもをもつ母親たちは、日本語を学ぶために時間を使うことに触れました。母親たちには、今はまだフィリピン語あるいは英語で子どもたちと話すことができるけれども、そのうちわが子が日本語が上手になったとき、わが子とコミュニケーションをとることが難しくなることがわかっています。その事態に備えるために、日本語の個人レッスンをすることが役に立つと考えているのです。
(カパティランスタッフ)

*TALAKAYAN タラカヤン

   タガログ語で、「議論」という意味です。「育児タラカヤン」は、育児について議論する、というように用います。

報告: カウンセラー・ケースワーカーのミーティング

2010年8月27日に教会関係及びNGOのカウンセラーとケースワーカーのミーティングが行われた。今回は、JFC(日本人とフィリピン人の間の子どもたち)、ミーティング、このグループの意義、その他の組織上の課題、及び、フィリピン大統領ベニグノ・アキノ3世の訪日を中心に議論が行われた。
6月に行なわれた前回のミーティングの振り返りを行ってから、フィリピンで出され日本に持ち帰られたJFCが共有している問題点について議論を行った。JFCのケースを担当するケースワーカーとのシェアリングで共有された問題は、教育、文化適応、アイデンティティクライシス(自己認識の危機)、ジェンダー及び性問題についてであった。
教育についての議論では、JFCが学業でついていかれないこどもが多い原因の一つとして、日本語能力が十分でないことがあげられた。さらに、他の生徒とつきあうことが難しいこと、環境が異なること、及び、多くの子が産みの母と上手にコミュニケーションが取れていないことがあげられた。母親たちは仕事や毎日の家事に追われており、わが子とのよい時間を過ごすことが難しいと感じている。
JFCにとって異文化環境で過ごすことも容易ではない。ライフスタイルの違い、いろいろな面でのやり方の違いが、混乱を引き起こす可能性がある。かれらの多くは、フィリピンで、拡大家族が面倒をみたり、必要とされるしつけを行って、成長した。その間に、夢をもつことを学び、大きな夢をもつようになった。大学の学位を得る、卒業後働くなど、目標を高くもつように促された。日本に行くことも、かれらにとっての夢だったが、日本に来た途端、多くは失望し、夢を見ることをやめてしまう。
ジェンダーの問題と性問題についても議論された。問題の多いJFCにどう対処するかについて意見が交換され、ケースワークのシェアリングが行われた。グループのメンバーにはこれらの問題について豊かな知識があるものもいるが、多くは、繊細で難しいケースをどうやって処理するか自信がない状態である。
行動計画
母親たちと子どもたちと一緒にワークショップを行ってはどうかというメンバーの提案に、グループ全体で同意した。そのようなワークショップが、母親と子どもの関係性の問題に取り組むことに役立つと考えられたからである。ケースワーカーがワークショップの進行を行うことになり、その準備として、フィリピン人のサイコセラピストでありUGAT財団の理事であるニーロ・タナレガ神父にワークショップを企画していただくように依頼する。ワークショップの参加者にはフォローアップカウンセリングも行われる。
もう一つは、JFC及び日本への移住家族の問題や課題について方針書を作ることである。この方針書はフィリピン大使館に提出される。グループでは、大統領来日の際に、大統領と話す時間が持たれ、方針書の内容について議論できることを期待している。(カパティランスタッフ)

「家族」ってなに?

ジェシカ・チン、ウェルズリー・カレッジ インターン

こんにちは、私はジェシカ・チンです。現在ウェルズリー・カレッジの四年生で、幸運にも、この夏の10週間をカパティランでインターンとして過ごす事が出来ました。私が、最初カパティランのインターンシップに応募した時、以前NPOで働いた経験や日本文化の知識を活かして、部外者としての私の見方を表せると思っていました。しかし、私が発見した事は、私の想像を超えて基本的にも個人的にもより複雑だということでした。移住者が新しい国で対面する問題を、現実問題として認識しなければなりません。けれども、深く経済に根ざす不平等、男女の差別、また、グローバリゼーションによる影響も共に考慮する必要があります。(でもこの問題は、一人や一つの国ではなくて、全員が一緒に相談して解決します。:Jessica訳注)
カパティランでは、私は、カウンセラー達に加わり、彼らがどのように相談者と対応するのかを見聞きし、また、事務局はどのようにカウンセラー達を支援しているのかを見ることが出来ました。私は何人かの相談者とも話し、彼ら自身の話を聞くことも出来ました。ワークショップに出席したり、相談者との面談の際カウンセラー達と共にいる機会がありましたが、一番印象に残ったのは、オフィスで全員でランチを一緒に食べた時のことです。スタッフがお互いに影響し合いながら行動し、常にお互いを支援し合う姿は、カパティランの真髄を良く現していると思いました。(スタッフの人間関係を見ると、カパティランの心を見られると思います:Jessica 訳注)。 自分たちの行動に注意を払う人達の集まりであり、そして、彼らの分かち合いの姿勢が、協力的環境を育み促進させているのです。その環境が、自らのことをも配慮する傍ら、他の人に支援の手を差し伸べることを可能にしています。(仕事が好きな自分たちのことに注意しながら、人間の大切さを守ることをしています。階級組織の上下より、人間の平等のために一緒に頑張るところです:Jessica訳注)カパティランでの研修の前は、フィリピンの事をあまり知りませんでした。でも今は、フィリピンの食べ物がとても好きになりましたし、フィリピンの文化もわかるようになりました。
私はまた、とても幸せなことに、千葉にある子どもの家「野の花の家」の施設の一つである「ビオラ」で働いているフランク・オカンポスさんと共に一週間を過ごして、野の花の家のことも教えていただきました。カパティランでは、移住労働者の日本での生活や彼らの遭遇する問題を見る機会がありましたが、野の花の家のまた別の施設である「こすもす」では、他の面を見ることが出来ました。それは、国際結婚によって生まれてきた子ども達や、両親が育てることの出来ない子ども達が、どのような支援を受けているかでした。「こすもす」で過ごしたことで、私は、家族の意味に新たな疑問を持ち、他人同士の関係だけでなく、血縁者間の関係をも探求しました。そして、そのような関係が果たして最終的に実際何らかの違いをもたらすのかとの疑問も持ちました。
カパティランと「こすもす」で働いた経験を通して、皆が他人に対して、生活や心を開けたら、皆が一緒に暮らし、働きながら、もっとすばらしい生活ができる可能性があることを習いました。「こすもす」では、子どもたちは本当の親類ではなくても、同じ文化や言語ではなくても、「家」と呼ぶことができるような、そしてまた帰ることができる安全な場所を、皆一緒に頑張って作っています。カパティランでは、クライアントは困っていても、彼/彼女たちの悩みを聞くことだけで、彼/彼女たちの寄りかかれる肩を貸すだけで、自分自身問題の解決ができます。皆が、周りの人たちをもう少し家族のように支援すれば、この世界はもっと安全になり、特にもっとグローバル化されることによって、より多くの人々が垣根を越えて家族となるでしょう。
私がこれらの事を学ぶことが出来たのは、カパティランの皆様のお陰ですし、家族のようにしてくださり、一緒に働けたことは光栄です。私が今回東京で学んだ事を将来生かしたいと思います。そして、いつの日か戻って来たいと思っております。
マラミン サラマッポ!
本当に有り難うございました!

 ■電話相談件数・相談内容  Top3

<6月>・・・・・・・121件

(1)ドメスティックバイオレンス・・・39件

(2)結婚に関する問題・・・・・・・・・11件

(3)法律関係・・・・・・・・・・・・・・・・10件

 

<7月>・・・・・・・170件

(1)ドメスティックバイオレンス・・・51件
(2)子ども・育児に関する問題・・・17件
(3)結婚に関する問題・・・・・・・・・12件

■ケースワーク件数/面談件数

<6月>

 ケースワーク・・・・・・・・・・・・・・・・14件
面談・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3件
<7月>
ケースワーク・・・・・・・・・・・・・・・・・4件
面談・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2件