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■2018年9月号 「2018年夏、野尻湖」 理事長 牧野兼三 coming soon…
■2018年7月号 「給付型奨学金への思い」 理事 鈴木幸夫
■2018年5月号 「学校に行くことはお金が掛かる」 理事 司祭マリア・グレイス笹森田鶴
■2018年7月号
「給付型奨学金への思い」 理事 鈴木幸夫
カパティランは、奨学金事業を開始した2015年10月から今年3月までに、大学生7名と高校生5名に対し総額318万円の奨学金を支給した。今年度は大学生5名(加えて下半期のみ1名)、高校生4名に180万円を支給する。お金のないカパティランにとって、これは大変な事業である。
奨学金を検討し始めたころ「貸与型でもよいのでは」という意見もあったが、給付型に踏み切った。経済格差が拡大し続ける日本で、奨学金という名の借金が学生の将来を暗くする状況が深刻さを増しているからだ。
その少し前、「司法試験に合格しても借りた奨学金が返せず自己破産に追い込まれ、法律家になれない」という嘘のような話を若い弁護士から聞いた。司法修習生(司法試験に合格し、弁護士や裁判官、検事になるために必要な実務研修制度)への生活給費が2011年に廃止されたからだ。1年間「無給」生活を強いられ、さらに借金がかさみそんな状況に陥る人が多発しかねないという。
事実、日本学生支援機構(旧日本育英会)によると奨学金が返せずに自己破産する人は年間3千人以上で、その数は増加傾向にある。
学生生活にはお金がかかる。高度な教育を受けるにはもっとお金がかかる。頑張って卒業し、公務員や正社員になれたとしても、数百万円~千万円近い奨学金返済を抱え、自分のやりたいこともできず、最悪、自己破産にまで追い込まれる。弁護士や裁判官や検事になるあと一歩の学生にもこんな状態の人がいるならば、他は推して知るべし。これが日本の現実なのだ。(この弁護士らの運動もあり「給費制」は去年4月に復活したが、以前の水準には及ばない。)
これらを「極端な例」と思わないでほしい。カパティラン奨学生は貸与型奨学金や教育ローンを背負いながら、アルバイトと学業を両立させるため必死で頑張っている。われわれの奨学金は、その重荷をほんの少し軽くできるかどうかのささやかなものだ。
勿論その奨学金原資は、支援者の皆様が額に汗し、お小遣いや生活費を節約し、神様に献げるのと同じ気持ちで下さった、尊く豊かな愛情に満ちたお金だ。こうした皆様の思いを一人一人の奨学生にしっかりと伝え、感謝と誇りをもって学業に打ち込んでもらう。これが、カパティランの大きな課題である。
■2018年5月号
「学校に行くことはお金が掛かる」 理事 司祭マリア・グレイス笹森田鶴
日本での高校進学率は現在98%となっています。また、高校卒業後の進路についても約70%が学業を選択し、就職率は16%弱です。つまり日本に住んでいる子どもたちの半数以上が、成人式を迎えるまでは学校に行っているということになります。そして、学校に行くということは、入学金、授業料の他に、制服、教科書や文具、遠足などの学校行事、修学旅行や卒業に関わる積立金、部活をすればその費用が必要です。友だちと少し遊んだりするにしてもこの社会ではお金が必要です。学校に行くということにはお金がとにかく掛かるのです。
親が低収入であったために、わたしは高校の時から奨学金の申請とアルバイトの経験をし続けていました。大学と大学院は親元を離れたために生活費も自力で獲得しなければなりませんでしたので、短期長期のいくつもの奨学金をいただき、授業と授業の合間も含めたアルバイトの掛け持ちをしていました。ただそれは、大学では祖母の家に下宿していたこと、無利子の奨学金をいただけたこと、バブル経済真っ只中であったので条件の良いアルバイトがあったこと、当時の学費が現在の物価に比べて安価だったこと、さらに傍目よりも体が丈夫だったこと、それらの要因よって何とか成り立ったことでした。卒業時の奨学金の総額は驚くべき金額になっていましたが、毎月少しずつ返済し、働き始めてから20年後にようやく全額返済できました。それでも奨学金があったことによってわたしは学業を続けることができ、今の仕事にもつながっていることをとても有難かったと思っています。
社会の仕組みが影響して学費が高額になったり、経済状況の厳しい家庭が増えてこどもたちの学びの機会が減少していたりするならば、こどもたちを支える仕組みを考え、実行していくことが必要であろうと考えます。カパティランでは高校生、大学生向けの奨学金支給制度があります。金額は小さいかも知れませんが、こども一人の将来を支える大きな支援であると考えています。ぜひご協力をお願いいたします。